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わたしの心の風景メモ。 


by sachiolin
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完全帰国日のメモリー

完全帰国して、1週間が経った。
携帯電話なども購入し、まったく新しい
生活が、ゆるりと始まっている。


今回の引っ越しは「壮絶」の二文字に集約される。
「荷物を詰める」以上に、「ごみを捨てる」
という行為が、これほどまでに大変だとは
思いもしていなかった…。まさかの最後の
数分数秒まで、ごみ捨ての嵐。この国を去るのだ
という思いに浸る、そんなセンチメンタルな時間は、
空港に着くまで微塵も許されていなかった。微塵も。

どうにかなるだろう、と、どこかで甘く考えていた
私の完全なる計算ミス。自分の責任。全くひどいもんだ。
こういうことも、自分ひとりの話だったら、
「笑い話」にもできるのだけれど、
結局友人を巻き込んでしまったので、
帰国してからも、悪かったなぁ…とずっと
自己嫌悪に陥って、後味の悪い帰国となってしまった。


どうにか…ならなかった。友人の助けがなかったら!
どうにも…ならなかった。友人の助けがなかったら!


とことん付き合ってくれて、
とことん助けてくれて、本当にどうもありがとう。

このご恩は一生忘れません。。。



50キロ制限の完全帰国特別便を利用したのだが、
チェックインで重さを測ってみると、2つの
スーツケースで、まさかの57キロ!!!
目の前の、ドイツ人のおふたり。

「あれ?これ50キロまでなんだけどなぁ。
 7キロもオーバーしてるし。これについてどう思う?」
「うーん。そうねぇ。。50キロって打ちこんじゃぇ」
「ん?あ、そうね。よい考えね!」

メーターを見て、フリーズしていた私は、
(そそそそれは、よい考えデス!)と、
心の中で、大きく叫んだ。
目の前のふたりが、神様に見えた。


片づけに、秒読みで必死だった私は、
スーツケースを預けたら、少し力が抜けて
「そういえば、今日帰るんだった」ということに
あらためて気づいて、飛行機に乗るまでの時間、
同僚や友達に、別れの電話をした。

こういう時に、その人となりがでて面白い。
割とサバサバと受け答えて、さわやかに見送る人。
最後の瞬間まで優しい声をかけ続けてくれる人。
別れは嫌だから、また会おうね!といってくれる人。

色々。


ある一人の言葉が心に残った。


「これから空の上で、あなたの人生のページが
 めくられるのね。第何章になるのかしら?
 うん、そうね、第3章くらいね。
 あなたに会えなくなってしまうのは、
 とっても残念だし、さびしいけれど、
 この決断はあなたにとって正しかったのでしょう。
 あなたのこれからの人生が、ますますキラキラと
 輝きますように。幸せがたくさん訪れますように。
 私、心から、祈っているわ。本当よ。
 またいつでも、私たちを訪ねにきてね。ね?絶対よ。
 楽しみにしているからね。どうぞ元気でね。さようなら。」


彼女とのこの電話で、一瞬時が止まった。
ああ、本当に、今、お別れなのだ、と思った。
彼女に会って思い切りハグしたくなった。

引っ越しで必死で、忘れていたけれど、
感情のふたが、封印されていたけれど、
一気に涙が井戸の下から溢れてきた。


これ以上、話したら、きつかったので、
何とか「うん、元気で」とだけ言って、
電話を切った。

沢山の人が、飛行機に乗り込んでいく。
私も、最後のひとりとして、その
乗り物に、吸収された。

「ドイツ、バイバイ」と、心の中でつぶやいた。




母国、日本で、飛行機を降りた瞬間、
むわぁっと、生温かい空気が私を包んだ。

「なんだこれは!」と思わず口にした。

帰ってきたのだ、私は。
この湿気は、本物だ。


巨大なスーツケース2個は、カートに
何とおさまりきらず、仕方がないから、
一つを載せて押しつつ、一つを手で運んだ。
背中には楽器を背負って、手荷物も二つ。
ちょっと、ひとりサーカス団みたいだった。


完全帰国のための手続きを済ませて、
宅配便で送ろうと、頼んだ。

しかし、送ろうとしたスーツケースは、
32,5キロだった。32キロ以上は、
代金が、ものすごく上乗せされる。

「ハイ、500グラムオーバーでだめですね。
 どうされます?なにか本でも抜きますか?
 はい。では。あーーお客さん、そこは
 邪魔なんで、あっち行ってください」

と、大荷物なのに、かなり遠くへと
冷たく追いやられた。スーツケースを減量
して、また荷物を全部持って、会計へ
えっちらおっちら移動。

「あ、ここ、持ち手がちぎれかけてますねー。
 あ、この底のところ、どうしたんですか?ふっ。」
と、鼻で笑われて、ぼろぼろのスーツケースと
同じように、私の心もちぎれかけた。

疲れで、もう、私の中の何かが壊れかけて、
人目も気にせず床に座ってわんわん泣きたかった。


7キロオーバーしても、笑顔でオーケーしてくれたのに、
500グラムオーバーで、問答無用にだめなんだ。
これが、日本かー融通がきかないなーマニュアル通りだなー
何かかなしいなー対応がとにかく冷たいなー

と、日本の第一印象は最悪だった。


それでも、何とかひとつのスーツケースを
減量成功して、送ることができた。


エスカレーターの横にかかれた
「おかえりなさい」の文字が
心に刻まれる。かえってきたんだね。

駅のキオスクで、ペットボトルのお茶と
あんぱんを、買った。涙が出るくらい、
美味しかった。日本の繊細な味。懐かしい味。


乗り換えの近くの駅まで、父親が迎えにきてくれた。

「空港まで車できて」と頼んでもよかったし
ここまで大変なら甘えるべきだったのだけど、
なんとなく、それはしたくなかった。

予想をはるかに超えた大荷物に
目を丸くして、「言えばよかったのに…」と
汗だくで、スーツケースを運んでくれた。
家族の顔をみたら、初めて、
「つつつつかれた~~~~~~」と
蚊の鳴くような声が、自分から出た。

家にたどりついた。
本当に、たどりついた、という感じ。


長旅だった。想像以上の長旅だった。
壮絶だった。ちょっと、死ぬかと思った。


あぁ。お疲れ様、自分。
あぁ。帰ってきたよ、日本。


ゆるりと、やっていこう。

ゆるりゆるり。

人生は長いから。
あせらず、さわがず、
ゆるりゆるり。



今日の言葉*

「いいかお前たち。常識を壊すってことは、
明日からまともに電車にも乗れなくなるってことだよ。
それで悩むだろ。でも僕らは永遠のいのちを手に入れようと
してるんだ。それにくらべて、30年や40年の悩みなんて、
どうってことはないだろ。」
「どうして人は戦争なんてしてひっどい殺し合い
なんて醜いことをするか知ってるか? この世界に
これっぽちも希望がないからだよ! くっだらない科学や
芸術や哲学が、嘘ばっかりの世界をつくってきたんだ。
いいかお前たち。僕らは死なないんだよ?」

荒川修作
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by sachiolin | 2010-08-08 01:51