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わたしの心の風景メモ。 


by sachiolin
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観■surviving Picasso

旅行中治りかけていた風邪がぶり返してしまった。
咳のし過ぎで、鳩尾が痛む。
早く元気に楽器を弾きたい。散歩に出かけたい。

今回の旅は、行きも帰りも飛行機に乗り遅れそうだった。
行きは、乗り換えるべき駅を乗り越し、タクシーを
呼んでみたが、実際に来るまでの時間を計算すると間に合わず
突然ヒッチハイクして(!)空港まで送ってもらい、セーフ。
運転してくださったあの心優しいマダムは神様に見えた。
帰りは、きちんと時間に余裕を持って行ったのに、
空港までのバスが、待てど暮らせど来ず。
やっと出発したのは予定の40分過ぎ。
しかも、高速道路では、交通事故が起きたようで、
だんだん徐行運転になり…ついに、停止!
「これはもう間に合わん。。」と頭を抱えたが、
飛行機出発時刻ぎりぎり30分前に何とか着き、セーフ。


この前イタリアに行った時も、予定では2時間前には
空港についているはずだったのに、自分の住んでいる町
から電車が華々しく出発したと思ったら、50メートル程
進んだところで、突然停車。その後も何か問題があったのか
のろのろ運転で、結局次の駅で乗り継ぎができず、
立ち往生(無人駅なのです。)。呆然と立っていたら
同じ目に遇ったロシア人女性が二人近づいてきた。
お父様が迎えに来たところを、便乗させていただけて、
近くの駅まで送ってもらえた。(これだけでも幸運。)
駅でドイツ鉄道のお姉さまに、事情を話すと、
「飛行機」という言葉を聞いて慌てたのか
急いで電話を繋いでくれ、タクシー券を出してくれた。
空港近くの駅までとりあえずタクシーで行くことになった。
「ぎりぎりだけど、頑張ってみるよ!」と朗らかな運転手は、
連なる車をひゅんひゅん全速力で追い越して、おかげで
空港には1時間前には到着でき、セーフ。


ああ、何故いつもこうなのでしょう。
たまには普通に飛行機に乗りたいものだ。
でも考えてみれば、いつも色々な人に助けられて
無事に乗れているものだ。感謝。


さて、
「surviving Picasso」という映画を観た。

今でこそ少し心が離れたが、
ピカソはずっと前から惹かれる画家だ。
一生で作風をこれほどまでに変え、
これほどまでに多作の画家というのも珍しい。

今まで見たピカソの作品で、心にずっと
残っているのは、晩年の陶芸作品。
数年前、ピカソがその制作に没頭した
ニース近くのヴァロリスという小さな村を訪ねた。
お皿に描かれた太陽や顔たちは、
一点の曇りも迷いもなく、潔く、凛としていた。
晩年に、ピカソが、「子供のように
描けるようになるまで、今まで時間がかかった」
と言っていたらしいが、天才ピカソが言うから
尚更重みのある言葉だ。

この映画には、ピカソを巡る4人の女が登場する。

元ロシア・バレエ団のダンサーで、最初の妻のオルガ、
愛人のひとりのマリーテレーズ、
「ゲルニカ」の製作過程を記録した写真家であり
「泣く女」のモデルでもある愛人のドラ、
画学生してピカソと出会い二人の子を儲けたフランソワ・ジロー
二人目の妻で、ピカソが死ぬまで献身的に
尽したジャクリーヌ・ロック。

オルガとの間には、長男パウロ、
マリー・テレーズとの間には、長女マヤ、
フランソワ・ジローとの間には、次男クロードと次女パロマ
があり、ピカソの死後、マリーテレーズとジャクリーヌ・ロックは
自殺している。


数々の女性をここまで狂わせ、のめり込ませてしまう
ピカソの強烈な個性とエネルギーは、
よほどのものだったのだろう。
天才というのは、愛というのは恐ろしい。

映画は、フランソワ・ジローの視点で進んでいく。
フランソワ役のNatascha McElhoneがとても美しい。
画学生だった当時、約40歳も年上のピカソと出会い、
10年の月日を経て、強く成長する姿を好演。

「私は愛の奴隷であったけれど、
 あなたの奴隷ではなかったわ。」
という言葉が心に残る。


ピカソ役のアンソニーホプキンスも流石。
ただ、彼の演じるピカソは、あまりに「動」の
エネルギーが強く、本当のピカソは、その対極の
「静」のエネルギーにも満ちた人ではなかったのかしら
と想像してみたり。ろうそくの炎の青色のような。


http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=52194


今日の言葉*
「芸術は心理ではない。芸術は嘘である。
 だが、その嘘は私達に心理を悟らせてくれる。」
「I am always doing that which I can not do,
 in order that I may learn how to do it.」
「日々の暮らしの塵を魂から洗い流すのが芸術なのだ」
「絵は、あらかじめ構想されても固定されてもいない。
 それは制作の過程で、画家の思考の変化に添って
 変貌するものなのだ。 そして完成した後も、
 それを見る人の精神状態によってなお変わり続ける。
 一枚の絵は生き物のように自らの生を生き、
 毎日の生活で私たちが 味わう変化をも経験するのだ。
 それは、絵画作品が見る人によって 初めて生命を
 与えられるのだから、当然のことだろう。」
(パブロ・ピカソ 1881-1973)




観■surviving Picasso_c0110074_12375252.jpg

by sachiolin | 2008-03-16 12:38 | 観■Film