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わたしの心の風景メモ。 


by sachiolin
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::アナンダの愛とマタンガの愛

いい話だ・・・・・
泣ける・・・
心があらわれる・・・・・


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アナンダの愛とマタンガの愛


 仏陀のいとこに、アナンダという男がいました。ある日アナンダは食べ物の施しを受ける托鉢に出かけました。のどが渇いたので井戸の前で足を止めるとそこにはマタンガという名の若い娘が座っていました。彼女は「ダーリット」、つまり「不可触賤民(ふかしょくせんみん)」と呼ばれる最低層のカーストに属していました。高いカーストの人々は、汚れるからという理由で不可触賤民に触れたり近寄ったりしませんでした。ですからアナンダが水を求めたとき、マタンガはこう答えたのです。「私はあなたに水を差し上げることはできません。私は不可触賤民で、あなたを穢すことになるからです」アナンダは言いました。「私達の教えにカーストの区別はありません。仏陀はわれわれはみな平等だと教えています。ですからあなたが私に水をくれても大丈夫なのです。私は穢れることもないし、恐れてもいません。」マタンガはとても喜びました。そして柄杓に水をすくってアナンダに飲ませたのです。彼は手を合わせて礼を言い、帰っていきました。

 マタンガはアナンダへの恋に落ちました。寝食を忘れ、彼がいかに美しく、正しく、優しい人かということばかり考えていました。何週間も眠れず、食事ものどを通らない娘を見て、母親は気を揉むばかりでした。

 ある日、托鉢に回っているアナンダに会った母娘は、食べ物の施しを捧げるために彼を家に招きました。家の中でふたりはアナンダに茶碗一杯の薬草茶を差し出しましたが、これが彼の明晰さを失わせたのです。お茶を一口飲んだアナンダは何かがおかしいと感じましたが、どう表現してよいものかわかりませんでした。けれども自分が危険な状況にあることはわかったので瞑想を始めました。何も言わず、何もせず、ただ座禅を組み、呼吸に従っていました。

 祇園精舎にいた仏陀は、アナンダが帰ってこないので心配し、ふたりの僧にアナンダを探しに行かせました。アナンダがマタンガの家で座禅を組んでいるところを見つけた僧たちは、彼らを祇園精舎へ連れて帰りました。激しく泣きじゃくっていたマタンガも一緒に連れて行かれました。アナンダが精舎に着く頃にはお茶の効果も薄れ、彼は仏陀の前にひれ伏して、連れ戻してくれたお礼を述べました。

 そこへマタンガが入ってきました。仏陀はマタンガに座るように言いました。「アナンダをそんなに愛しているのですか?」と仏陀は尋ねました。
 マタンガは「はい、私はあの人をとても愛しています」と答えます。
すると仏陀は「アナンダのどこを愛しているのですか?目?それとも鼻ですか?」と問うのです。
 マタンガは答えました。「あの人の目も、鼻も、耳も、口も、愛しています。アナンダがいなければ、私は生きてはいけません」
 仏陀は言います。「アナンダには、あなたがまだ見ていないものがたくさんあります。もしそれが見えればあなたはもっともっと深く彼を愛するようになりますよ。」
「それはどんなものでしょうか?」とマタンガは尋ねました。
 仏陀は微笑みました。
「アナンダの愛、アナンダの菩提心です。あなたは彼の目、鼻、耳、口しか見ていません。彼は若い頃、多くの人を助けたい一心で裕福な家庭を捨てて出家しました。アナンダはひとりやふたりの人とともにいるだけでは幸せになれない。そんな幸せは小さすぎるのです。だからこそ彼は僧侶になったのです。アナンダはたくさんの人を助けたいと願い、広い平等の心を持っています。ひとりの人だけではなく、何千人もの人を愛したいのです。アナンダの菩提心はとても美しい物ですから、もしそれがわかればあなたはもっともっとアナンダを愛するようになるでしょう。
 あなたがアナンダを本当に愛しているのなら、僧侶としてのアナンダの深い志を、彼の菩提心を、実現させてあげてほしいのです。アナンダは一陣の爽風のようなもの、もし独り占めして小箱に閉じ込めたら、爽やかな風は失われてしまいます。アナンダはまた青空に浮かぶ美しい雲のようなものです。もしつかまえて箱に入れ鍵をかけてしまったら、アナンダは死んでしまいます。彼の持つ最も美しいものがあなたには見えないばかりに、そうなってしまうのです。それが見えたなら、あなたは彼をもっともっと愛するようになります。それも、アナンダの助けになるような愛しかたができるでしょう。ちょうど、雲を美しい青空にそのまま浮かべておくことが、雲の助けになるように。
 美しい志をもっているのはアナンダだけではないのです。あなたも同じ、あなたにもその美しさがあります。本当にアナンダを愛し、その菩提心を見ることができるなら、あなたもアナンダと同じように生きることができます。まず自分の中の菩提心を見てください。そして、できる限り多くの人を幸せにできるような生き方をあなた自身がしていくと、アナンダに誓えばいいのです。」
 マタンガはこれを聞いて驚きました。
「私にはなんの価値もありません。私は最低カーストに属しています。他人を幸せにすることなどできませn」
 仏陀は言いました。
「いいえ、あなたはすでに人を幸せにしている。あなたはすでに、自分の中に美と善と真実を持っているのです。それらはすべての人が持っているものです。自分の中にある根本的な善、真実、美に触れることができるなら、それを信じて多くの人たちに幸せをもたらすことができるとわかるはずです」
 マタンガは尋ねました。
「本当にそうでしょうか?わたしも 出家して尼僧になり、何千人もの人を助けることができるのでしょうか?」
 仏陀は答えました。
「もちろんです。できないはずなどありません。あなたが菩提心を育むことができたら、あなたもアナンダのように多くの人に幸せを与えることができるでしょう。」
 マタンガの悟りは仏陀によって開かれ、彼女は地面にひれ伏しました。こうしてマタンガは尼僧となり、その愛は開かれ、計り知れぬほどに広がっていきました。
by sachiolin | 2014-10-16 01:16 | 引用::