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わたしの心の風景メモ。 


by sachiolin
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<   2008年 05月 ( 8 )   > この月の画像一覧

久しぶりに毎日オーケストラ。
今回はセカンドを担当しているが、
これがまた、とても楽しい。
時にビオラと共に
時にファーストと共に
時にチェロと共に。
支えたり、寄り添ったり、突っついたり(?)。
昔はセカンドの醍醐味がちっとも
分かっていなかったナ。
それにしても、モーツァルトの
Sym. Nr39の4楽章のセカンドは難しい…。
職人技である。修行が足りん。


指揮者は、元ヴァイオリニスト。
私の憧れの人、シャンドール・ヴェーグの
元門下生で、そのヴェーグの率いた
ザルツブルクのカメラータアカデミカで
コンサートマスターをしていたとか。

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by sachiolin | 2008-05-28 09:49 | 考〇

観■Leonard Rose + Glenn Gould

スターン、イストミン、ローズの
ブラームスとベートーヴェンのトリオの
映像を見てから、特にローズの演奏が
最近とても好きになり、色々物色していたら
You tubeですごいものを見つけてしまった。

あのグールドとローズの
ベートーヴェンのチェロソナタ3番。

このお二人、そもそも
接点がおありでしたか。
シラナンダ。

スターン、イストミン、ローズのピアノトリオは、
きっと本当に人生のよき音楽仲間なんだろうなと
いうのを感じさせる、熱き熱きアンサンブル。
ぶつかり合い、対話し合い、昇華する。

それに比べると、
グールドとローズの二人は
全く方向性が違う。

グールドは、一見まるで自分の世界に
入り込んでしまっているようで、
決してそうではない。

椅子が異常に低く、上半身を
大きく揺り動かすグールド特有の
演奏スタイルに対して、
たまにちらっとピアニストを見ながら
しれっとした表情で、無駄な動きひとつなく、
深く温かい音楽を紡いでいく巨匠ローズ。

似ても似つかぬような二人なのに、
お互いのオーラが横にも上にも広く、
二つの周りを取り巻く音楽のエネルギーが、
それぞれ巨大で、色も光も違うのに、
きれいに重なりあって、いつしか
さらに大きな一つの球体に包まれている感じ。

見るだとか、合図を送るだとか
そういう次元ではなくて、
自分の「気」を出して
相手の「気」を受け取っている。
究極に聴き合っている。
すごいアンサンブル。


それにしてもグールドは、全て暗譜!
初めて見たよ、チェロソナタを
楽譜なしで弾くピアニスト。

この人の手はすごい。
どんなに体が激しく揺れ動いても、
指は鍵盤を舐めるように、
いつも貼りついている。


手だけ映るカットがあるが、
彼の細く長い指は、まるで
美しい蜘蛛の足のようで、
不気味にさえ感じるほど、妖艶。
その指の動きだけ見ていると、
ピアノを弾いている動きには
見えなくてなってくるほどだ。
動きそのものに、目が吸いついてしまう。

ローズもすごい。
あの弓の動き。
先でも元でもとにかくぶれない。
弦の震えを最大限に活かす。
弦楽器というのは、こうやって
鳴らすのだと改めて思い知る。


要するに、
接点がぶれなければよいのであるよね。

ある意味、そこに本質を見るというか。
グールドなんて、途中、指揮まで
登場するが(!)接点は、とんとぶれず。


鍵盤と指。
弓と指。
弓の毛と弦。
左指と弦。


逆にいって、その接点以外は、
脱力して楽にすることが大切で。



それにヒントを得て、
左手の構えを変えてみたらうまくいった。
根本的には、私は首の力を抜くことが
とても大事で、そこが抜けないと
全てが硬直する。
バランスの問題で、ちょうどよい
角度というのに、全てがピタっと
嵌った時というのは、まるで
楽器を弾いていないようだった。
弓が勝手に動いてくれ、
楽器が浮いているようで
楽器の重さも弓の重さも感じなかった。
弓の動きに体がくっついていき
いくら弾いても疲れない感じ。
自転車で、補助輪なしで
初めてすーっと走れたような感覚。
音が、すーっと透明に出る。
弾いていて気持ちよかった。

でも、あの感覚は、昨日だけ。
今日はどうも取り戻せない。

ヴァイオリンは、チェロと違って
左手が、自分の体の方を向いているから
少しややこしい。左肩は前に出てもよいが、
決して上がってはいけない。
肩でロックしてしまうと
指先まで伝わらない。

左手の力が抜けると、
右手が乗って、
いい音が出る。

左手に力が入ると、
右手も力が入って、
音の芯がぶれる。

左と右のかけっこ競争。
どちらかが上達すると
片方もぐんと伸びる。


今は我慢の時。
何かを変えるときには、
どうしても我慢が必要だ。

がまんがまん。
じっとがまん。


がんばろっと。


http://www.youtube.com/watch?v=GchB9unYkOE



今日の言葉*
「声なきもののために語らなければならない」
(アルベール・カミュ/ ノーベル賞受賞講演で。)
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by sachiolin | 2008-05-24 23:48 | 観■Musik

傷口、その後。

5月に入ってぴかぴかの晴れの日が続いて
いたのに、ここ最近はずっと曇り空。
まるで夏のようなお天気だったのが、
まるで冬のような肌寒さ。
またコートとマフラーを引っ張り出したりして。
自転車乗りには、手袋も欠かせないほどだ。
全く極端である、お天道様。

ところで、この前の月曜日。
再び歯医者訪問。

問題の抜歯後の傷。

「うーん、やはり血がまだ出ますね。
 これは仕方ない。」

と、先生、もう麻酔の注射を手にしておる。
あっという間に、それを、歯肉へ。

あまりの痛さに絶句する私。
今までの経験した麻酔で一番痛い。

「痛いですね、我慢してくださいね。
 ここ、最後に傷口に麻酔。
 これが一番痛いかも。我慢我慢。」

ううう。

そして、傷口の治療に入る。


ガリガリガリガリ
ゴリゴリゴリゴリ


こ、こここれは。
この音は、骨が削られてる?!

多分自分が想像するほど
大したことはしていないのだろうが、
何せ音が響く事。
そして、あの感触。

思い出しただけでも寒気がする。


ガリガリガリガリ。
ゴリゴリゴリゴリ。


サウナに入っても
ジョギングをしても
なかなか汗のかかない私が、
一気に手に汗をびっしょりかいた。
頭の先からつま先まで、かちんこちんに緊張。
目も開けられない。血の気がどんどん引いていく。


時間よ、はやく過ぎておくれ。



ゆっくり目を開ける。
どうやら、終わったようだ。

ガーゼのようなものが傷口に入っている。

「はい、きれいになりましたよ。
 これで回復するでしょう。
 抗生物質は飲み続けてね。
 左だけで噛んで、口の洗浄も忘れずに。
 明日また来てください。
 詰め物を替えますから。」


歯医者をやっと後にする。
足元がふらふら、頭もふらふら。
あのガリガリという感覚を思い出すと、
血の気がまた引く。


何だか気が滅入って、
日記もなかなか書けなかった。
歯が悪かったせいか、頭も何となく重いし、
目も腫れてるし、耳も痛くなる。


もうヴァイオリン上手くなれなくてもよいから、
歯を、どうか歯を全部健康にしてください、
神様、仏様。

という思いが募ったここ数日。
少しずつ回復しているような。
また明日、歯医者さんへ。

本当に、健康第一である。




昨日は、チャンピオンズリーグの決勝。
モスクワでイギリス同士の闘い。
ものすごい数のファンがイギリスから訪れた。
フーリガンを恐れて、アルコール販売を禁止したとか。
イギリスのサッカーってあんまり好きになれないナ。
喧嘩早いし。バラックもあんなに感情的だとは。
スペインの王子が、PKを外すとは。

ドイツにいる間に、一度サッカー観戦に行きたいな。


今日の言葉*
「最後まで希望をすてちゃいけない。
 諦めたら、そこで試合終了だよ。」
(スラムダンクの安西先生)
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by sachiolin | 2008-05-23 02:35

歯、その後。

昨日は久しぶりに雨らしい雨が降った。
カラカラに乾いていた大地も緑も
待ってましたとばかりに嬉しそうだ。

「ブログ読んでるよ~」と、
言われることが最近何度かあって驚いた。
こんな私の独り言を読んでくれている人が
世界のあちこちにいるのだと思うと、嬉しい。

スイスのえりかちゃん、
日本のshら~~(分かるかな。笑)
イタリアののりこさん
ドイツのVcおきさん(?)
みなさん、どうもありがとう。

(突然呼びかけてみて驚かせたかった。ははは)



例の抜歯事件から2週間以上が経った。
どうも、今度は右上奥の歯肉が腫れて
痛いので、近所の歯医者に行った。
いつもの先生は休暇をとっていて、
もう一人の少し年配の先生だった。
偶然だったのだが、
こっちの先生のが断然よかった。
丁寧だし、慎重だし、説明もきちんとしてくれる。

いつもの先生は、若くて、体育会系で、乗りも軽い。
「はーい、これでだいじょうぶ!」と、
ポーンと肩を叩かれても、
「本当かしらん。。。」と何となく首を傾げてしまう。
多分腕はいいのだろうが、治療も、
ぱっぱっとハイスピードで済ませる。
質問をしたくても、そういう間も雰囲気もない。

勿論いくら丁寧でも何でも
腕がよくなかったら元も子もないのだろうが、
だからといって、やっぱり患者が治療に納得して
体だけでなく、心も医師に任せられなかったら、
きっと本当の意味でよい治療とは言えない気がする。

やっぱりどんな職業でも
技術を磨くことは勿論だが、根本的なところで
人間性やハートが大事なんだよねと思ったり。
心技一体というやつであります。



さて。歯の話。
右奥の歯肉は確かにかなり腫れていて、
昔被せたKrone(直訳は冠。ここでは歯冠)の中で
まずい事が起こっている可能性があるとか。。

がーん。。。


しかし、問題はそれだけではなかった。
抜歯後の傷口もよろしくないらしい。
レントゲンをまた撮った。
臼歯は、根が二手に分かれているのだが
一方の傷口が、まずい事になっていると。
怪しいと思われるところを少しだけ
突っついてみる先生。

「うーん、すぐに血が噴き出てくる。
 もう二週間以上も経っているんだよね?
 これはまずいなぁ。
 とりあえず消毒をしておきます。
 また月曜日に来てね。それでもまだ
 同じ状況だったら、折角塞がってきた
 傷口を開いてみないといけません。
 抗生物質もまた飲み始めてください。
 毎日3回ね。絶対だよ。
 あと、左だけで噛んでくださいね。
 それではお大事に。」

毎食後、歯磨きをして、口腔内の専門の洗浄液で
毎回くちゅくちゅやっていたのになぁ。
がっくり。

でも、そういえば、最近
左だけで噛むという意識が薄れていたかも。
遠出をしたり、合わせが続いたりと忙しかったから、
余計に抵抗力が落ちてしまって悪くなったかも。

暫くは家で大人しくしていませう。
暫くはまた左に顔を傾けて、考える人で食べなくては。

何だかなぁ。
手を故障したときも切実に思ったが、
日本にぱっと帰られたらいいのに。

どらえもーーん。どこでもドア!!!


昨日友人とも話していたが、
やっぱり海外生活が長くなってくると、
どこかで無理が溜まってくるものだ。
日本のように食材の種類が豊富ではないし
どうしても食べるものも限られてくる。
食って大事だとつくづく。

そういえばお味噌汁、最近作ってなかった。
昨晩は久しぶりのお味噌汁に、
日本人3人で

「ぷはぁ~~~~~っ。
 体に沁み亘る~~~~っ。」

感動的な美味しさ。


「あなたが自分は日本人だと実感するときは?」
という質問されたら、
私は迷わず

「お味噌汁を口にしたとき」

と答えるだろう。
みなさんは何かしら?



今日の言葉*
「愛は人の心を受け止めること
 恋は人の心が変わること
 だから恋愛ってのは
 変わっていく人の心を受け止めることなんだよ」
(出所不明)
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by sachiolin | 2008-05-16 23:44
5月に入ってからというもの、本当に毎日のように
ぴかぴかの晴れ続き。いいお天気なのは嬉しいが
ここまでぴいかんが続くと、ちょっと怖いくらいだ。
実際に、ドイツでも山火事の恐れがあるらしいではないか。
そろそろ雨が、ざざざぁっと降ってくれないかしら。



ここ最近は妙にイライラすることが多くて
こういう時には、いいものは書けまいと日記も控えていた。
ハートも何だかストップしていて、ちっともcreativeではなかった。
カルシウム不足だと思って、牛乳一気飲みなぞしても効き目なし。
久しぶりにジョギングをしても、それほど効き目なし。
やはりPMSなのかもしれないナ。
そう思うと少し楽になる気がする。
自分が何でこんなにイライラしているのか分からないと
余計にイライラが募ってきたりするのだ。
ちと悲しきかな。




久しぶりにジョギングをしたら、
緑の草原だった所に、無数のたんぽぽ達が咲き乱れていた。
強く強く太陽にまっすぐ向かって咲く花と
地面に這いつくばってじりじりと伸ばすその緑の葉っぱを、
走りながら横目で見ていたら、何だか心が洗われた。
強いな、美しいな、この子たち。
踏まれても踏まれても、まっすぐまっすぐ。


ふと、中学校の国語の先生の言葉を思い出す。
転任が決まって最後の授業で、
緑の黒板に白いチョークで大きく書かれた言葉。

「雑草のごとく生きよ。」

目の前にある雑草の、強い美しさを目の当たりにして、
昔に聞いた言葉が、ますます心に刻まれる。





自然体でいることと、
状況に流されてしまうことの
境界線がいまいち曖昧になっていた。

芯がぶれてはいけない。

芯がぶれることなく、かつ自然体でcreativeでいられたら
逆に、よい状況というのを呼び込めるのかもしれない。
一方で、どんな状況にも、変に逆らわないことも大事だ。
吐き出さないで飲み込むこと。
そして芯を一回り太く強くすること。
芯以外は、楽でいること。
前に進んで風が吹いてきたら、自然に任せること。
風が吹かなかったら、風を呼び込むこと。
勢いをつけること。
抵抗すること。
妥協しないこと。
自分に嘘をつかないこと。
じりじりと努力すること。
ぐんぐんと成長すること。




大好きなすみきちブログを読んでいて、
とても共感するところがあった。

「自分にできることは、
 その巡ってきた機会の意味を無駄にすることなく、
 誠意を持って進むだけだ。
 そういった巡り合わせを信じることと、
 自分の芯の部分に誠実であり続けること、
 そのふたつを守れば、人生って、行くべき方向に
 ちゃんと進んでいくものだって信じてる。
 不思議だけど、そうなんだ。
 きょうはそんな神秘を感じたので、
 書いておきたいと思った。

 Things happen for a reason,
 But you yourself is the one who makes it a "good" reason.」

http://blog.livedoor.jp/sumikichi_blog/



「自分の芯に誠実であり続けること」か。

むずかしー
でも
だいじーー


今日の言葉は、
最近読んで要所要所で号泣してしまった
灰谷健次郎さんの「兎の眼」から。
何故あれほどまでに心にダイレクトに響くのだろう。
不思議だ。
いつの間にか、心から泣いている自分がいるのだ。
本を読んでいてああいう泣き方というのは珍しい。
この人の描く世界には、箱の外から眺める視線が
欠けている気がするが、でもだからこそ、
その箱の中にぐいぐいと引っ張る力は果てしなく強く、
色んな意味で、主観と客観のバランスを崩される小説だ。

バクじいさんのファン。素敵。
「海辺のカフカ」のナカタさんのように強く心に残る存在。
また他の作品も読んでみたい。



今日の言葉*
「人間は抵抗、つまりレジスタンスが大切ですよ、みなさん。
 人間が美しくあるためには抵抗の精神をわすれてはなりません。」
(灰谷健次郎・「兎の眼」より)
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by sachiolin | 2008-05-14 08:08 | 思〇

占∴音の姓名判断

4月は雪が降ったり、曇ったり、雨が降ったりと
忙しかったが、五月に入ったら、なるほど
申し合わせたように気持のよいお天気が続いている。

ドイツ人は待ってましたとばかりに、
半袖やノースリーブになって外でカフェをする。
そしてこれも申し合わせたように風邪を引く。
朝晩の冷え込みは、まだまだあるのが、この時期。

それにしても本当にお日様が大好きな国民だ。
まぁそれだけ冬が暗く長いのだが。
日本だと、色白、美白と騒ぐけれど
ドイツだと、ちょっと小麦色がよしとされる。
日傘なんて差した日には、目を白黒させられる。


もう5月。

あっという間の2008年。
あと2か月もすれば、半分が終わってしまう。

今年は、考えてみれば
手を故障したり、歯を抜いたり、大変な年である。
その分、何かいい事が待っていますように♪


歯の調子はゆるゆると回復中。
体調はまあまあかしら。
全体的にだるく重いのと
右目が少し痛いのが気になる。

日課のジョギングをしてみるも
少し走るだけで傷口がズキズキするので
軽いウォーキングに留めている。

ヴァイオリンは、普通に弾けている。
左下の歯でなかったのが不幸中の幸い。
寧ろ変に食いしばったり、
力を入れられないのが、よいかも。
最近、見違えるように音が変わった。
雑音が減ってクリアになった。
弾いていて気持ちがよいのだ。


さて、ひとつ、姓名判断。
「音」で判断するというもの。
これが、結構当たる気がする。

私は+3のスピーカー。


みなさんもどうぞ。

http://www.kengoueda.com/index.html




今日の言葉*
「自分の感受性ぐらい 自分で守れ ばかものよ」
(茨木のり子)
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by sachiolin | 2008-05-06 22:10 | 占∴
よく読む、茂木健一郎さんのブログ。
http://kenmogi.cocolog-nifty.com/

4月に読んだある日の日記になるほどと思った。
ずっと引用したかったのだが今になった。
「正体不明であること」
他者にとっても、自分にとっても。
自分で自分にびっくりすること。

成長していくには、
自分という枠をビックバンのように
爆発的に押し広げていくには、
それはとても大事なことなのだと思う。

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by sachiolin | 2008-05-05 00:55 | 引用::

神経まであと2ミリ。

今日はちょっと怖いお話。

4月に大きな試験が終わってから
何となく頭が重い日が続いたが
きっと疲れが出たのだろうと
ゆっくり休むようにするだけだった。

急に目が悪くなったり
耳が痛かったり
頭が重かったりした。
考えてみると、全て右側だけだった。
右目に右耳に右の頭。
継続的ではあったにせよ、
痛みは耐えられないほどのものではなく、
鈍いものだったので、あまり気にしなかった。

今思い返すと、
たった一度だけ、何か冷たいものを
飲んだ時に、まさに脳天を突き抜けるような
非常に鋭い痛みが走ったが、一過性のもの
だったので、そのままにしてしまった。


痛みを感じ出してから、ほぼ2週間。
なかなか痛みは消えてくれない。
寧ろ悪くなってきている気がする。

「やっぱりこれはおかしいゾ」と感じて
重い腰をやっと上げて村の歯医者さんに赴いた。

普段はできるだけ日本で治療しているので
この歯医者さんは、凡そ2年ぶりだ。
予約なしに駆け付けたがが、痛みがひどいから
今日何とか診て欲しいと頼んだら、それほど
待たずに入れてもらえた。

※ちなみに、ドイツの病院は基本的に完全予約制。 
 また、Hausarzt、つまり主治医を持っているのが
 一般的で、必要によって、専門医を紹介される。
 何年か前までは、保険でほぼ全治療費が賄われていたが、
 現在は10ユーロがかかり、この代金は、3ヶ月間有効。
 ただ3か月といっても、1~3月、4~6月、7~9月、10~12月と、
 1年を4等分したもので、例えば3月31日に治療したら
 4月1日には又10ユーロ払わなければならない。
 (この制度導入当初は、どこも混乱気味で、
 病院の受付でも患者と病院側が揉める光景をよくみた。)
 ただし、その3か月内に、一度10ユーロを払えば、
 その支払証明書が、どの病院でも有効になる。
 歯が悪くなって、次に目が痛い…となっても、
 10ユーロで済むわけだ。私は結果的に今回は歯医者を
 3件もハシゴしたのだが、勿論10ユーロでだった。
 
 
さて。
名前を呼ばれてレントゲン室に行き、写真を撮影。
できあがった写真を見たドクターの顔色が変わった。

「うーん。これはまずい。
 以前治療した歯の内部で、虫歯が悪化して
 顎の骨の方まで腫れ上がっています。
 今の状態では、麻酔の注射を打っても
 治療は危険です。まずは薬を飲んで
 腫れを鎮めてからにしましょう。
 治療の三日前から飲みだしてください。」

思わず絶句している私。

「え。そんなひどい事になってしまっているのですか??」

「そうですよ。あなた、2年も来なかったでしょう。
 この歯はちょうど2年前に治療した歯です。
 もっと定期的に検査しないとだめですよ。
 神経を抜いてしまっていたから、これほど 
 ひどくなっているとは気づかなかったのでしょうね。
 
あまりの事にショックを受ける私。
先生の方針に従って、三日前から薬を飲みだすとなると、
治療を受けられるのは、最短でも木曜日。
運悪く木曜日は休日。そして金曜日は定休日。
結果的に、月曜日に予約になってしまった。

呆然としながら、処方箋をもらい薬局で薬を買う。
Isocillinというペニシリン系の薬だ。

「このまま1週間も放置しておくなんて危険だ。」
と、直感した。
病院に戻り、悪化してしまう事はないのか、
悪化してしまったらどうするのか、
何とかもう少し早めに治療はできないのかと
質問したが、兎に角薬を飲んでもらわない事には
何も始まらないの一点張り。

これはまずいと、本能的に感じた。

日本人の歯医者さんのことを
随分昔に話していた知り合いに慌てて連絡。
電話番号を聞き、早速電話をする。
金曜日と言われたが、無理やり次の日に
捩じ込んでもらった。

マインツの近くまで電車で約3時間。

不安で一杯になっている私に、
受付の人が、問診表を手渡す。
一目見て、驚いた。日本語だ。
ドイツに来て、初めて日本語でこういうものを書いている
という事そのものに、感動すら覚えてしまう。
書き途中で、日本人の先生が通りかかる。
ちらっとこちらを見て、にこっと笑い
「こんにちは。」と言い合う。

ひと目で、優しい笑顔先生だなと思った。
少し不安が解けていく感じがした。

治療室に呼ばれる。
レントゲン写真をじっと見てから
なるほどなるほどと小さく呟いて、こちらを向いた。

「あなたの場合はこういうことです。
 この歯の根っこの部分見えますか?
 根の周りが黒い影になっていますね。
 これは、何ていうのか、膿のようなものです。
 で、この下を通っている細い線見えますよね?
 これが神経。
 この悪化して腫れあがったものが、
 神経までかなり近づいてしまっています。
 そうですね、これだと…神経まであと2ミリくらいです。
 これははっきり言って危険な状態です。」

なるほど、黒い影がはっきりと見える。
寒気がぞくぞくっとする。
神経と黒い影は、もう少しでくっつきそうだ。
 
「こういう内部で広がってしまった虫歯というのは、
 外見は全然変わらないので非常に分かり難い。
 ましてや、神経を抜いてしまっている歯ですからね。
 残念ながら、この歯は、抜く以外に道はありません。」

治療でどうにかなると思っていた私は、
「抜く」という言葉を聞いて、
わなわなと全身の力が抜けていった。

「それでですね、勿論私が抜く事も出来るのですが、
 万が一、この膿の袋が、すこしでも神経に
 貼りついてしまっているような場合、抜いた拍子に、
 神経を傷つけてしまう可能性があるわけです。
 これは絶対に避けたい。一生のことですからね。
 ですので、念のため、口腔外科のお医者さんを
 紹介しますので今からそちらに行ってください。
 無理にでも今日やってもらうように頼んでみますからね。
 傷口を縫うかもしれないですが、抜糸も勿論その先生の
 所でやってもらってくださいね」

ショックを隠しきれない私に、先生も気づいたようで、

「いや、でもまだ今でよかったですよ。今だからよかった。
 あともう少し遅かったら、本当に危険でした。」

本当にそうだ。不幸中の幸いである。

何度もお礼を言って次の歯医者さんへ向かう。
道すがら、いろんなことを思った。
今まで、歯医者に行かなかった自分を責めたり、
今まで一緒に人生を共にしてきたこの歯を
抜いてしまうのかと思うと、悲しくなったり
親に申し訳ないなぁと思ったり。
とはいっても、抜かないと、神経が麻痺してしまうし。
ヴァイオリンどころの騒ぎじゃない。
これは一生の問題だ。一生が懸かってるんだよ、お前さん。

私の人生は、今までも、いつもぎりぎりだったけど
「神経まであと2ミリ」だなんて、いくら何でも
ぎりぎり過ぎるよなぁ。今までいろんな事があったけど
ぎりぎり断トツナンバーワンだよなぁ。


昨日から数えて3件目の歯医者さん。

新装したのか、明るく近代的な病院内。
問診表を渡される。
今度はドイツ語。
見たことのない単語がずらりと並ぶ。
仕方ないから一語一句辞書を引く。
やはり病期のときは、日本が安心だなぁと感じる。

金髪で、目が優しいけど、筋肉質な先生。
ハローと握手をする(ドイツは病院で握手が多い。)
マシュマロのような柔らかい手。
チェロなぞ弾いたら絶対いい音するに違いない。
この手で何本の歯を抜いてきたのだろう。

「これに、サインしてください。」

と渡されたのは、抜歯了解の文書だった。
何も言われず勝手に歯を抜かれたというのは、
ドイツでよく聞く話なので、この先生は
そういう所はきちんとしているのだナと思った。

しかし、考えてみれば、
今回も、母国語で丁寧な説明を受けたから
抜歯に関しても、辛かったが納得ができた。
あのままドイツ人の歯医者さんにかかっていたら
納得もいかなかっただろうし、一生後悔していただろうな
と思うと、やはりはるばる赴いて本当によかった。

麻酔の注射が十分に効いたら
治療はすぐに始まった。
慣れた手つきで淡々と仕事を進めていく。
写真から判断したのか、触って分かったのか、
「歯を半分に割りますね」と一言。
グイーンとぐるぐる高速回転するナイフ登場。
歯医者の諸々の音ほど、嫌いなものはない。
キーンと耳を劈くようで、心も痛い。

暫くして、ミシミシと音がする。

半分に切り終わって、
いよいよ根っこを抜いているらしい。

ミシミシ、ミシミシ。

「まだここに痛いのにぃ…」
という歯の叫びにも聞こえた。
ごめんよ。悪かったよ。

どうやら上手く抜けたようだ。
縫わずに済んだ。

「はい、ではお大事に。」と握手したら
あっという間に次の患者へ向かって
先生は消えていった。


抜けた歯をじっと見る。
きれいに切られて、側面図のように
よく見える。根っこの先に、なるほど
大きな塊がある。お前さんが悪の根源か。

少し躊躇したが、持って帰っていいかと尋ねた。
少し微妙な反応だったが、いいですよと
ティッシュペーパーに包んでくれた。

抜歯後の注意という紙をもらい、
3件目の歯医者を後にした。


翌々日、また日本人歯医者さんを訪ねた。
傷口の消毒と、全部の歯の総点検だ。
今回のような事はもう2度と起こしたくない。
ところが予想に反して、他の虫歯はないとのこと。
ほっと一息。

また何度もお礼を言って、家路についた。


暫くは、左に傾いて食べたり飲んだり
していたが、大分回復中。
早くよくなりますように。

明日は、予約通り村の歯医者さんへ
行って、消毒してもらおう。
抜くはずの歯がもう無くて、
歯医者さん、拍子ぬけするだろうな。



本当に今回のことは、
不幸中の幸いとしか言い様がない。
あのまま、何となく過ごしていたら
どうなっていたのかと想像するだけで
寒気がする。歯の神経を抜くというのも
考え物だなとも、正に痛感(!)した。


みなさんも、どうぞお気をつけて。
病気はやはり早期発見、即対応が一番。



今日の言葉*
「棒には二つの端がある」
(ロシアの諺)
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by sachiolin | 2008-05-04 09:30