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わたしの心の風景メモ。 


by sachiolin
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カテゴリ:綴 ~~( 19 )

水たまり

喫茶店で本を読んでいたら、
若い女性二人がなにやら
親密に語り合っているのが聞こえてきた。
若い男性が亡くなったようだ。

二人の雰囲気は、深いかなしみのなかにも
ほんのりと明るさがあって、水たまりのようだった。

時折急になにかを思い出すと、
突風が吹いたように、波紋が揺れた。
ことばを詰まらせて、二人とも涙を拭う。
肩を震わせて、涙を静かに拭う。

それはほんとうに水面がゆらゆらと揺れているようで、
二人の周りがゆらゆらと揺れた。

隣りに座っているわたしのところにも、
その波がゆらゆらと訪れた。
しばらくわたしは、その波のなかで揺蕩った。

それからまた静かになった。

二人のなかに、その人の一部が生きていた。
その人の陽炎のような熱を感じた。
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by sachiolin | 2016-02-14 01:05 | 綴 ~~ | Trackback | Comments(0)

結び目

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結び目はかたく
そしてまた
結ばれた紐は
途方もなく長い

彗星のように
また出会うことが
あるだろうか

散らばった鏡の破片を
物語のなかで
回収していく

それをチリチリと
静かに燃やして
ほんのりと照らす



今日の言葉*

…でもそうではありません。
愛というものが本来、よってたつのは
能力や魅力ではなく、無力や欠落だからなのです。

石井ゆかり「愛する人に。」
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by sachiolin | 2015-11-07 23:37 | 綴 ~~ | Trackback | Comments(0)

森と少女

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花はただそこで静かにおだやかに咲いていた。その花を知りたくて、さわりたくて、入ってしまった少女は、森の憤りにふれた。足をすくめ、後ずさりする。よく見ると周りにもたくさんの花が咲いていた。あの時は確かに一輪だったのに、花は、群れをなしていた。知らぬ間に花を踏みつけていた。どれほどの時間が経っていたのだろう。少女は動けなくなってしまった。いや、ずっと動いていなかったのかもしれない。

今はいつだろう。

森にまだ立ちすくんでいた。このまま立ちすくんでいたら、まるで自分が木になってしまうようだった。ふと空を見上げると、太陽が木の間から仄暗く光っていた。月のようだった。森は、少しおだやかになり、風が吹いた。少女は森から静かに去った。森から出ると、体のなかがムズムズした。はじめのうちは何が起きているかわからなかったけれど、どうやら体のなかで、種が芽を出しはじめていた。あの野原で、とても美味しそうな木の実が落ちていて、その実を拾って口にしたのを少女は思い出した。道を駆け出した。そのお腹のなかで静かに花が咲いた。
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by sachiolin | 2015-08-17 19:50 | 綴 ~~ | Trackback | Comments(0)

〜〜〜 透明なただの今

今、今、今。
いまのいま。

一歩進むと
たちどころに
消えていく今よ

掴もうとすると
うなぎのように
手から抜け出る今よ

仕方なしに
澄みきった
今の残り香を
かいでいる

そうすると
今の予感が
煙ってくる

それから
ただの今が
突然訪れる

透明なただの今
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by sachiolin | 2014-01-12 02:07 | 綴 ~~ | Trackback | Comments(0)

蜂蜜

夜の木々は、しーんとしていた。木々も眠るのかもしれないと思うほど、とろんとした蜂蜜のような静けさが、あたりを包んでいた。気配をすっかり消していたら、私のほうにもその蜂蜜が降ってきたから、早足で家に向かった。逃げ切ったかなというところで、
ふと後ろを振り返ると、月が、蜂蜜の上で、ほくそ笑んでいた。
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by sachiolin | 2013-11-16 01:36 | 綴 ~~ | Trackback | Comments(0)

無題

其処彼処に奇跡が浮かぶ
時の粒がパチンと弾ける
砂の庭のような流れる形
ゆらめきさざめき零るる
ヒリヒリと焼印が火照り
石はかなしみを飲み込む
大きな月のボートに乗る
夜の河はとっぷり微笑み
星は彩りを失い黙り込む
線香花火の音が聞こえて
また誰かが死んだという
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by sachiolin | 2013-08-12 19:09 | 綴 ~~ | Trackback | Comments(0)
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感情はどこへいったのだろう。相変わらず、とりとめのない時間が、わたしのなかに流れ込んでいる。長い時かけて、束ねてきたものや、編んできたものが、するすると解れていく。その空に浮く糸を手にとろうとしてもとれない。どこかこわいのに眺めているしかできないのだ。大切にしてきたものが手から離れていく。もしかすると、大切にしてきたものだからこそ、それをぎゅっと握らず、手の平を開いて、自由に羽ばたかせるべきときなのかもしれない。少なくとも分かっているのは、その動きに対して、私はどうすることもできないということだ。寂しくも嬉しくも悲しくも楽しくもなく、ただ眺めているのだ。眺めることが苦手だったのに、今は眺めることしかできないだなんて、人生面白いじゃないか。こんな気分ははじめてだ。こんな風景ははじめてだ。ここのところ空中庭園にいるようだ。


今日の言葉*

機とは疑いなきも思い込みなきを云ふ。疑うては機を逃し、思い込んでは機を逃し、機を捉えられる者それ稀なり。さらに機を稽古できるもの稀なり。稽古にて刹那のなかの懸待一致を知る者は稀中之稀や。懸かる機を捉え、待つ機を捉え、懸かりて待ち、待ちて懸かれ、一致を知ることや否や稀な稽古なり。

光岡英稔
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by sachiolin | 2013-04-16 22:55 | 綴 ~~ | Trackback | Comments(0)
「こんなところで波はいったいだれのために吠えたけっているのか、だれがその声を夜毎にきくのか、波は何を求めているのか、さらにまた、私の去ったあと、波はだれのために吠えつづけるのだろうか---それすらわからなくなってくる。この海岸に立つと、思想ではなく、もの思いのとりこになる。そら恐ろしい、が同時に、限りなくここに立ちつくし、波の単調な動きを眺め、すさまじい吠え声をきいていたい気もしてくる」

チェーホフがみたその海が目の前に広がる。マタイ受難曲が流れる。涙は頬を伝うけれど、荒れ狂う風があっという間にそれを乾かしてしまう。ザラザラとした潮風は、すべてを卵の殻のようにさせる。今は夏なのか冬なのか。空はばかみたいに晴れている。陽射しがいつになく強い。執拗に涙を渇かされる頬は、本当に卵の殻のようになってしまった。卵のなかには、白身も黄身もなく、薄紅色の桜の花びらが何枚か音を立てている。その砂浜に来るものは誰もいない。今のところは。あるいは、永遠に。







Erbarme dich, mein Gott,   
Um meiner Zähren Willen!  
Schaue hier, Herz und Auge  
Weint vor dir bitterlich.  
Erbarme dich, erbarme dich!
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by sachiolin | 2013-02-23 11:23 | 綴 ~~ | Trackback | Comments(0)
測り知れないもの。

夜空の沈黙のような。
宇宙の熱狂のような。
遠い星の衝突のような。

沈黙と熱狂が渦巻くところ。

憧れと安堵と冷淡さ。
細かな胸の震えと
あたたかな抱擁と
寄る辺なき塀のふち。


塀のふちに立って
宇宙に飛び混んでいく。

誰もそれを止めやしない。
誰もそれを止められない。

電車は次々に雪崩れ込み
鉄のレールに火花を散らす。

そっと背中を押される。
ふっと手をつなぐ。
やわらかく大胆に。

宇宙の穴は永遠に遠ざからない。


かなしみなんて苦しみなんて
どこかに消えてしまう。

地球を角砂糖一個分にするように
かなしみもも苦しみも
ブラックホールにしてしまう。

熱い珈琲に溶けてしまう。
静かな宇宙に溶けてしまう。

ほんの一瞬で溶けてしまう。


でも珈琲はまだ注がれない。
珈琲カップに、砂糖を入れる。
珈琲カップに、渇いた音がコダマする。

カランコロン。
カランコロン。


今日の言葉*

善きことはカタツムリの速度で動く。


ガンジー
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by sachiolin | 2013-02-13 01:39 | 綴 ~~ | Trackback | Comments(0)
明日は、数年前に亡くなった友人の日。大切な日。
手紙、うまく読めるかな。。

〜〜〜〜〜

あなたがこの世からいなくなったと聞いたのは、私がまだ遠く離れたドイツにいるときでした。電話でその知らせを聞いたとき、心がシンと静まりました。受話器をもったまま、私は身じろぎもせず、ずっとシンとしていました。それは、深い静けさに包まれるドイツという国に暮らし始めて4年目くらいの出来事でしたが、あの日、あの夜、外に散歩に出かけ、白い息を吐きながら眺めた深い群青色の空の美しさと、頬を伝う涙の冷たさを、今も鮮明に覚えています。あの日から、私の心のなかには、ぽっかりと穴があきました。決して埋められることのない穴が。

あなたとは、小さい頃からのお友達でした。しっかり者で、賢くてやさしく、いつも笑顔で遊んでくれたあなたは、一人っ子の私にとっては、お姉さんのような存在でした。あなたの笑顔。キラキラしたあなたの笑顔が本当に大好きでした。自分のことよりも、人のことを真っ先に考えることができて、その迷いの無いまっすぐなやさしさが、あなたという人の真ん中にしっかりと生きていて、太陽のように照らしていました。最後に話したのがいつだったのか、正確に思い出せませんが、もっと連絡をとっておけばよかったと、何度も後悔しました。

何がおきても、明日というものは訪れ、笑ったり泣いたり、喜んだり嘆いたり、そのさまざまな心の矛盾の中で、あなたのことをふと思い出しながら生きてきましたが、ある日、お母様にお会いすることになりました。そういうタイミングが訪れたのでしょう。懐かしいあなたのことを、たくさんたくさん聞きました。

人それぞれのなかに流れている時間、光と闇、希望と絶望。 たくさんのこと、たくさんの物語が私に流れ込んできました。

長い長い時間をかけて、複雑に強く絡まっていた糸が、
するすると解れていき、何度も涙を流しました。
人が生きるというのは、本当にものすごいことですね。
語りきれない願いが、語りきれない思いが、押し寄せて、私を揺さぶりました。
お母様のお話を聞きながら、あなたは、精一杯生きて、精一杯命を燃やしたんだ、
私は、そういう風に、心から感じました。いや、それは所詮、私の独りよがりかもしれません。けれど、あなたのことを、あなたの最期をじっくり聞いて、私のなかで、あなたは再び強烈に生きて、消えていったのように感じました。あなたの死を聞いて以来、空いていた心の中の穴が、決して埋ったわけではないし、あなたのことを抱きしめることもできなく、そのことは、私をひどく深くかなしくさせますが、私がそのとき鮮烈に感じた、あなたの命の強さを、きちんと覚えておこう、そして、これから度々思いだそうと思いました。あれはあなたの魂なんだと、感じました。
あなたのことをどこか淡々と語るお母さまは、 何か、大きな大きな物語に包まれているようで、 その物語のなかに、あなたも生きているんだなあと深く感じました。 お母さまの笑顔に、あなたの笑顔を見ました。
私は、初めてほっと、温かな気持ちになりました。その笑顔に抱きしめられました。 あなたは、確実にわたしのなかに生きています。消えてなんかいない。 あの日の夜空の美しさ、あなたの笑顔をずっと心の秘密の場所にしまって生きています。 あなたに出会えてよかった。ありがとう。
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by sachiolin | 2012-11-11 02:05 | 綴 ~~ | Trackback | Comments(0)