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わたしの心の風景メモ。 


by sachiolin
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:: 自殺について。

内田樹の研究室より引用

ドイツのどの雑誌でいつ頃出版されるのかな~






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日本で昨年一年に自殺した人は前年より504人多い32、753人。12年連続で3万人を超えた。10年間で30万人。年間3万人というのはアメリカにおける銃による死者数とほぼ同じである。

日本の自殺率は10万人あたり24.4人で、世界6位(日本より上位にあるのはベラルーシ、リトアニア、ロシア、カザフスタン、ハンガリー)。西欧諸国はどこも日本よりはずいぶん低い。フランスが17.0人で19位、ドイツが11.9人で36位、イギリスが6.4人で67位、イタリアが6.3人で68位(いずれも2009年度統計による)。



自殺率についてはエミール・デュルケームの古典的な研究がある
・・・・・
結果的には、「気候が暖かいところに住み、儀礼的な宗教を信仰し、大家族の一員であるような人間」はめったに自殺せず、「寒くて、厳しい宗教的緊張が強いられ、単身者であるような人間」は自殺しやすいということになる。


例えば1900年から47年までの間と1962年から83年のあいだではドイツの方が日本より自殺率が高い。
1930年代のドイツの自殺率は実に十万人当たり30人に迫っていた。

世界中のすべての国民に汎通的に妥当する規則は一つしかない。それは「戦争中は自殺者が減る」ということである。これには例外がない。欧米もアジア圏も含めて、すべての社会集団に共通する自殺率の増減についての法則はこれ以外には何も見つかっていない。

近代史上、日本で自殺率が有意に低い値を示したのは5回ある。
日露戦争(1905-6年)、第一次世界大戦(1914-18年)、日中・日米戦争(1937-45)、ベトナム反戦闘争・全国学園紛争(1964-71年)、バブル経済末期からバブル崩壊期(1989-95年)である。


「非活動的な社会において、根を失って浮遊している」というのは、おそらく現代に固有の主体の様態である。
前近代の社会はたしかに階層固定的であり、流動性の乏しいものであったが、人々は共同体の中に深々と根を下ろしていた。逆に、近代社会において人々は根を失って浮遊していたが、社会そのものに流動性があり、能力の高い個体は、共同体のしがらみに繋縛されることなく、自己利益の追求に励むことができた。
だが、現代日本はそのどちらとも違う。
日本社会は流動性を失って、硬直化を始めている。強者たちは連合して既得権を死守し、一方、弱者は分断され、原子化した状態で、階層下位に釘付けにされている。おそらくそのような状況の中で、特定の社会集団(若く、貧しく、孤立した人々)の生命力が衰微しつつあるのだと思う。


一つは、地縁的・血縁的な共同体(ゲマインシャフト)を再構築すること。孤立した人々を受け容れ、癒し、慰め、彼らが自尊感情を保持できるような場を作り出すことである。
一つは、「誰にでも、成功のチャンスがある」ように、階層的な流動性を担保することである。ただし、そのためには強者は「強者たちの氏族」の形成を自制し、階級的に独占している権益の一部を投じて、社会的弱者のプロモーションを支援しなければならない。


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by sachiolin | 2010-02-15 06:35 | 引用::